ANREALAGE

もうひとつの世界と光を形に。
「ANREALAGEの樹脂」ができるまで

樹脂の中に一瞬の時を閉じ込めるANREALAGEの定番「樹脂シリーズ」。
ひとつとして同じものがない花や植物、その時の光の当たり方により見え方が変わる。
今回その作られるまでの風景と、デザイナー森永邦彦がこの商品に寄せる思いを聞いた。
神は細部に宿る、その真意はどこに。

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INTERVIEW

樹脂シリーズをスタートしたきっかけと、そのコンセプトを教えてください
2004A/W「スズメノナミダ」というコレクションで、雀の涙ほどのちっぽけなことに夢中になるということをテーマに服をつくりました。その一環として、ボタン、下げ札、ハンガーなど普段は資材として扱われ、洋服の主役にならないような見過ごされゆく部分に対して、徹底的に追求してやってみようという意識が生まれました。これまでのファッションで消耗品として捉えられているものに注力し、価値を見出したいと思っていました。スタートしたばかりのブランドとして現実的な生産手法を試行錯誤した中で、自分たちでボタンのゴム型をつくり、そこに樹脂を流し込んでオリジナルの樹脂のボタンを作るというアイデアを思いつきました。 最初はボタン自体の形をどうしていくかを考えていたのですが、むしろ樹脂の中に何かを閉じ込めることで、その中に誰も触ることのできない小さな世界を作り、「ボタンの柄」として提案していくのが面白いのではないかと考えました。
最初は、洋服を作る過程で見過ごされがちなミシンの折れた針や錆びたスナップ、糸くずなどを入れていましたが、退廃的になり過ぎてしまうので、コントラストとして花びらを入れてみました。生地にプリントや刺繍をされている花柄とは違う「本当の花柄」という樹脂シリーズの原点がそこでスタートしました。
確かにこれまでのファッションで「花柄」といえば2次元の概念ですが、それが3次元のリアリティをもって現れるのは不思議な感じですね。
今の時代テクノロジーの進化で、リアルなものをバーチャルやデジタルの世界でどう見せていくかという流れの中で、その可能性の追求をする一方、逆にバーチャルなグラフィックやデジタルで形があってないようなものを、リアル化していきたいと考えています。近年での「NOISE」や「SHADOW」などもそういった発想がベースになっています。
次に、ANREALAGEのテーマで度々登場する「時間」という概念と樹脂シリーズのつながりを教えてください
樹脂シリーズを作った時の原点が、中学生の時に見た映画「ジュラシックパーク」なんです。冒頭の象徴的なシーンで太古の昔の恐竜の血を吸った蚊を閉じ込めた飴色の琥珀がでてくるのですが、その時に「時間は閉じ込めることができるんだ」という発見があったことを覚えています。樹脂の中の世界では時間が止まり、外の世界では時間が変化をしているという2つの時間の進み方がそこに現れています。ANREALAGEでもREALとUNREALという対極的な価値の追求をしていくなかで「進みゆく時間と止まった時間」という時間に対するデザインをこの樹脂シリーズでは表現をしています。
当初様々なものを入れていた樹脂シリーズで「花」を入れ続けている理由を教えてください。
花は咲いている場所、咲く時期、そのひとつひとつの形などで、同じものがふたつとない有機的な自然の造形物の象徴です。また、花を摘み、切り、樹脂に入れていくということを手作業で人が行っているので、必然的に「不揃いさ」がでてきます。そのひとつひとつの違い自体に「作る人」の手が発する無意識のメッセージや「使う人」の個性を尊重したいという想いがあります。 大量生産があたりまえの今の時代で「ひとつとして同じ物はなく、そのひとつひとつの差異がある」ということが価値を持つと思います。二度と同じものがつくれないというある種の「儚さ」が樹脂シリーズには存在しています。
ANREALAGEにとって、花や植物に感じる美しさの本質とはどんなものでしょうか?
現象です。極論を言ってしまうと、やはり自然がつくるものには勝てないなと。ただ、勝てないからといってあきらめるのではなく、自然が作るレベルを追い求めていくことが重要なんじゃないかと思うのです。見上げた空の色が綺麗だなと思ったとして、その色自体を完全に再現して作ることはできないと思うのですが、空にある太陽にかざすと色が変わる素材を作ることで、その空が作り出す現象を少しでも感じられるようにすることはできると思います。壮大な自然に対して、あきらめてしまうのではなくて、そこを追い求めていく。今回のiPhoneケースも、そんなスケールのテーマをあえて7cm×12cmに閉じ込めていきたいと考えています。
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